福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「……あの、西宮さん。こんな事報告しても気分を害するだけかも知れないんですけど、私、さっきまで小椋さんとご飯を食べてました」

このまま言わなくても良い話なのかもしれないし、逆に言わない方が良い話なのかもしれない。だけど、それでも私は彼に話し始めた。

私は、彼に知ってほしいことがある。


「うん。出入り口で、麻美がスターズ出版の人と話してたところを見たって営業部の人から聞いてたから、知ってたよ」

彼は、またもや驚くことなくそう答えた。

西宮さんは、私が今まで元恋人と会っていたことを知っていたという事実に、逆に私の方が驚いてしまった。

「そうだったんですね」

「うん」

一瞬、私と西宮さんの間に流れる沈黙。

私は、すうっと息を吸い込むと、再び口を開いた。

「……実は、彼がこの会社を出入りしていることを数日前に優佳に聞いてたんです。その時、内心凄く動揺して、また彼の方に気持ちが揺らいだらどうしよう、なんて考えまで浮かんできて……」

「うん」

「西宮さんは優しくて、こんな私の事をいつも褒めてくれるし、凄く嬉しくなったり、幸せな気持ちになるような言葉をたくさんくれるじゃないですか。私にそんな風にしてくれる人、今までいなかったんです。だから、舞い上がって〝好き〟だって勘違いしてたんじゃないか、って。そうだとしたら、私は小椋さんに簡単に気持ちが移ってしまうかもしれない、って不安になったんです。だけど」
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