ほとんど話したことのないクラスメイトの男子がある日突然、自分の夢の中に現れるーー。そんな冒頭から見事に世界に引き込まれ、夢中で読みました。
大好きな人に嫉妬してしまう、そしてそんな感情を抱いてしまう自分の醜い部分に悲しくなり、自分を嫌ってしまいそうになる。誰もが一度は経験したことがあるのではないかと思います。
主人公の那月ちゃんにわかる、わかると何度も共感しながら、夢の中での雨夜くんが見せてくれる景色に心を打たれたり、明かされていく秘密に何度も涙したり。とにかく圧巻の一冊でした。
好きなもの、やりたいこと、他人に対する劣等感、羨ましさ。普段なかなか口に出すことができず、押し殺してしまう。そんな私たちの背中をそっと押してくれるほんとうに素敵な作品です。ぜひ文庫でご一読ください。