214草子
自信満々の先輩
【自身満々の先輩】


 ひとつ年下だけれど、彼は私たちの学年でも人気者だ。
 そんなライバルの多い彼に、有名店の高級チョコを買った。こんなチョコは他の誰も渡さないだろうし、味も見た目も長い時間をかけて吟味したから大丈夫だ。

 クラスの子たちは「さすがお金持ちは違うねぇ」「お金持ちで羨ましい」「わたしじゃ絶対できない」なんて言うけれど。
 家がお金持ちだなんて関係ない。このチョコは、私がこつこつアルバイトをして貯めたお金で買ったものなのだから。

 絶対できない、なんて、どうして言い切れるの? 本命の相手に最高級のものを渡したいと思うなら、お金を溜めればいいじゃない。チョコひとつにそこまでお金をかけられないと思うなら、愛情をたっぷり込めた一口チョコでもいいじゃない。

 私は彼に振り向いてほしいと思ったから、一番良いチョコを選ぶためにアルバイトをしてお金を貯めた。残りのお金は髪や爪や身体のケアに使っている。家のお金じゃない。全て自分で稼いだお金だ。
 そんなことを知らないクラスの子たちは、私がすること全てに嫌な視線を向ける。

 みんな好き勝手言うといい。何と言われようが、何と思われようが、私は彼がどうしても欲しかったからこうしただけ。あとは彼が応えてくれるのを待つばかり。



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