狂愛社長に溺愛されてます
「あっ……」



カタカタと自分がキーボードを打つ音とは別に軽快なメロディが聞こえてくる。

熱樹さんからの着信だ。
スマホから流れている音楽は、熱樹さんが好きだというバンドの曲。
あたしが設定したわけではなく、熱樹さんが設定したものだ。



「熱樹さん?」



戻ってくるのは夕方だったはずなのに、こんな時間に電話がかかってくることに不思議に思いながら出る。



『あいつ来てったようだね?』


「あいつ?」


『君が好きだった男だよ』



スマホ越しにでも、熱樹さんがいつものようにニヤっと笑っているのがわかるような気がする。



「……なんで?」


『わかるよ。君の周りのことは』


「え?」



熱樹さんの言葉に体が震えそうになる。

いつでも熱樹さんに見られているような感覚。



『忠告、したほうがいんじゃないかな?』


「忠告?」


『いくらでもクビにできるんだよ』



熱樹さんの言葉はあたしを恐怖に陥れるには充分だった。

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