狂愛社長に溺愛されてます
「じゃあ行こうか」



社長が歩き出すので、あとについてあたしも歩く。

面接でさえ、社長とは話していない。
人事はすべて専務に任せてるとかで、社長は一切採用には関わっていなかった。

だからどのような人かも全くわからず、沈黙が続くこの距離感の居心地が悪い。

そもそも相手は社長なのだから、うまいこと話なんてできるわけもなく。



「君は、実家はどこだ?」


「え!?」



エレベーターの中、急に声をかけられて普通の質問にも関わらずうまく話せなくなる。



「そんなビクビクしなくても。そんなに僕が怖いかな?」


「いえ!そんな……」



怖いとかではない。
ただただ、あたしはいま極限の緊張を味わっている。



「ただ、僕は君に興味があるだけだよ」


「……興味?」



社長の意味深な笑顔の奥には何が秘められているのかとても気になった。



「実家は?」


「あ、札幌です」


「北海道なんだ」



ふっと笑う社長にドクリとあたしの胸が高鳴る。

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