狂愛社長に溺愛されてます
「風詩のことは好き、だよ……」


「うん」



風詩があたしの言葉を優しい顔をして聞いていてくれる。



「でも、付き合うかってなったらわからなくて」


「うん」


「風詩のことが好きなのに……」



浮かんでくるのはどうして違う人の顔なんだろう。



「いま、誰の事考えてる?」


「え?」


「俺じゃないよね?」



風詩には全てお見通しみたいで。
優しく笑う風詩に申し訳なさが広がる。



「……風詩が好きなのに」


「俺が好きって言い聞かせてるだけじゃないかな?」


「え?」



言い聞かせてる?
風詩の言葉が理解できなくて、首を傾げる。



「たぶん、あの日からもう楓の頭の中に俺はいないよ」


「……あの日?」


「楓が社長に連れて行かれた日」



風詩の口からあたしの頭の中にある人が出てきてドクンッと胸が音を鳴らす。



「……そんな」


「あの日から楓は惹かれてたんだよ。社長に」



自分でも気づいてなかったことを風詩からあっさり言われて、目をぱちくりさせる。

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