狂愛社長に溺愛されてます
「だからって、なんでこんなこと……」



風詩があたしの手を握る。



「入社したお前を初めて見たとき、コイツのことが好きだとすぐにわかった」


「……一目惚れって言ってましたよね?」



あれは嘘だったというのか。
そんなのは信じられない。



「言ったな。風詩が好きなお前を一目みて、絶対に落としてやるって思っただけだ」



今までとは違う冷めた目であたしを見る。



「……嘘だ」



熱樹さんはいつだってあたしには優しかった。
異様な執着だったけど、それでもあたしには優しかった。
だからこそあたしは惹かれていったんだ。



「嘘じゃない。お前はただの復讐道具にすぎない」



──……復讐道具。


その言葉はあたしの心を砕けさせるには充分すぎた。
その言葉を聞いた瞬間、あたしの瞳からは大粒の涙がボロっと零れ落ちる。



「楓、行くぞ」



風詩があたしの手を握る。



「あんたが楓を傷つけたこと俺は一生許さない」



去り際に熱樹さんにそう告げて、あたしを引っ張って歩いて行った。

< 46 / 71 >

この作品をシェア

pagetop