狂愛社長に溺愛されてます
〝チーン〟と前と同じような音を鳴らして、最上階へとたどり着く。



「失礼します」



エスカレーターから続くきらびやかな絨毯を超えれば、彼がいる社長室。
その社長室のドアを久しぶりに開く。



「……っ」



あたしの声に反応したように、すごい勢いで振り向いた熱樹さん。
何も発さなかったけど、その目は戸惑いを含んでいた。



「これ、課長から頼まれました」



熱樹さんのいる窓際へと足を進める。



「……それだけか?」



ぼそっとそう呟く。



「はい。ここに判を押してください」



持ってきた書類を捲って、判が欲しいところを指さす。



「読まない判なんて押せないから、そこに座ってて」



あたしから書類を奪い取って、顎でソファーをさす。



「はい」



熱樹さんの言葉にソファーへと座る。



「やわらかっ……」



久しぶりのソファーはやっぱり柔らかくて、初めて座ったときと全く同じ反応をしてしまう。

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