愛しのエマ【完】
もうハグはない
ひざまくらもない
エマさんの話もない。
秘書の遠藤さんが打ち合わせにやって来て
話す副社長の横顔を覗く
横顔が綺麗な人だ。
着実に仕事に対する自信も出て
自分の物にしている。
もう私は必要ない。
ランチタイム
「シュウマイが入ってる」
「冷凍ですよ」
「冷凍でも美味しいです。奈緒さんのちくわキュウリも好きです」
「それは自信あります」
豪華な焼肉弁当を食べながら
私は副社長と和やかに会話する。
「副社長」
「はい」
「総務に戻らせて下さい」
「戻りたいですか?」
「はい」
ぼんやりと
副社長はデスクの上の写真を見つめる。