この手で君を、抱きしめたくて
「遥輝、お前は誰に手紙を残す?」

司令官室から出てすぐに俺にそう聞いてきたのは、特殊第1部隊で、唯一の同期、三上 翔だった。


「俺は、書かない」

両親は小さい頃に離婚し、父の顔は知らない。

そして母は、俺が4歳の時に病死した。

書かない、と言うより、書く人がいないと言う方が正しいかもしれない。


「そんな顔するなよ」

俺の答えを聞いた翔があまりに悲しそうな顔をするので、俺は笑った。


「書く人がいない方が、俺は気楽で良いんだよ。翔は、誰に…?」

「俺は、両親と…奈々に書くよ」
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