この手で君を、抱きしめたくて
俺は、2年前にチームSが招集された時のことを思い出していた。


その時、俺には付き合って1年半になる彼女がいて、結婚を真剣に考えていた。

そんな彼女に唯一、俺がついていた嘘…

それは、自分は普通の警察官だ、というものだった。


だからこそ、チームSに招集され、大切な人への遺言を残すよう伝えられたとき、悩んだ。

そして、悩んだ末に、遺言を書くことが出来ず、彼女に別れを告げた。


…彼女は、俺と居ると幸せになれない。

大切な人にも身分を明かせない命懸けの仕事に就く俺には、誰かを愛する資格はないと思った。


彼女は今、会社員の男性と結婚し、幸せに暮らしていると、風の噂で聞いた。

これで、良かったんだ…
< 5 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop