アウト*サイダー

 好きって、楽しいの?

 どうして私には分からないの?

 どうして皆は分かるの?

 どうして……

「弁当、いらないの」

 急に話しかけられて、持っていた箸を落としそうになる。

 慌てて両手で掴もうとした私の手が、別の大きな手で包まれていた。

 目の前には男の子の顔があって、思わず体を仰け反らした。

「よかった、落とさなくて」

 宮永慧がほっとしたように私の目を見て言う。

 日を浴びて透けた瞳がすごく綺麗だと思った。男の子に綺麗と言うのは可笑しいだろうけど。

「友達は?」

「ハルちゃんは茶道部の友達と用事があって……て、そんなことより手離してよ」

「あぁ、うん」

 あぁ、うん……だって。その低めの声が私の耳に懐く。そんな表現があるかどうかは知らないが、全然嫌な感じがしないってこと。

「それで、何か用?」
< 10 / 466 >

この作品をシェア

pagetop