アウト*サイダー
「友達の証に、これあげる」
お弁当の中から焦げのない綺麗なだし巻き玉子を箸でとって彼の口元に差し出す。
「へ……?」
目が点になっているリョウスケは、だし巻き玉子と私の顔を交互に見やって、また「へ?」と間抜けな顔になる。
「いらないんだったら別にいいけど」
「いっ、いる!」
箸を引っ込めようとした私の手をとって、リョウスケはぱくりとだし巻き玉子を食べた。
「美味しい?」
両親が小料理屋をやっていて、私も店の手伝いを小さな時からしてるから、お弁当は自分で作るけど、だし巻き玉子だけはお母さんが作ってくれたものを入れている。
見た目も味も完璧で、私の大好きなだし巻き玉子。それをリョウスケが黙って食べる表情を窺う。
「……うまい。まじで、うますぎる!」
ごくりと喉を鳴らして開口一番に出た言葉と、それがお世辞なんかじゃないと分かる表情に安堵し、嬉しくなる。
「お母さんが作るだし巻き玉子は私にとって世界一だから。食べたくなったらうちの店に来てね……有料だけど」