アウト*サイダー
少しだけ張った低い声。
肩を震わせた彼女の困惑した表情。
私は片方の口角を上げて、嘲るように口を開く。
「もう、こうやって話しかけないでくれる?」
本心だ。だから、ハルちゃんの返事が来る前に背を向けて、とっくに探り当てていた鍵を取り出す。乱雑にかごの中へと鞄を放り込み、自転車の錠を解いて動かした。
彼女が後ろで名前を呼んだことは気付いてて、私は振り返らなかった。
自転車に乗って、ただスピードを出した。
私がハルちゃんを傷付けた。
ハルちゃんに辛い顔をさせて、優しい言葉をかけてあげず、酷い言葉と酷い顔を向け、逃げた。
でも、私は間違っていない。
間違っていたって、私は引き返さない。
あそこで他に私が出来ることなんて、何もない。
何も、ないから。