アウト*サイダー

 自分の部屋に入って、全身の力が抜けたようにベッドへ体を沈めさせた。

 出てくるのはため息だけ。

 もう、手も足も動かせない。

 ……動くけど。

『もう顔も見たくない』

 そんでもって、頭も動くみたい。

 人が一生懸命、奥に奥に仕舞い込んでるのに、記憶が前へ前へと何かで押し出されて、こいつもこいつで申し訳なさそうにパッと出てきて引っ込んで、また出てきてを繰り返す。

 主が呼び出すまで出てこなくていいのに。

 記憶の主は私で、私はこれを望んでいないのに。

 止めようのない無駄な思考の外で、部屋の扉が開く音がした。

「学校で、ケンカしたの?」

 お母さんの質問は質問でありながら質問じゃない。

 のそのそとベッドに沈めた上半身を上げて見た母親の表情は、心配のしの字もない、呆れたようなものだった。

 語尾に“?”があっても疑問形じゃなく、確定されている。

 ……娘の人付き合いの下手さを誰よりも知っているのだ、この人は。
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