アウト*サイダー
「もう、大丈夫」
沈めた体を起こすのはすごく体力を使ったけど、ベッドに座るお母さんの前に正座する。
「八つ当たりして、ごめん」
しおらしく項垂れる私の頭をお母さんが撫でてくれる。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって。心配しすぎ」
「ハスミが心配させすぎなのよ」
さも心配して弱々しくなったように頬に手を当てて嘆息する母に「全然痩けて見えないよ」と、正直に教えて上げる。
お母さんは心外だとばかりにわざとらしく驚いてみせた後、ベッドから立ち上がった。
「ハスミ。愛しい娘に怒られたお父さんが、あまりのショックに自分の指を包丁でちょん切らない内に下りてきてね」
部屋の扉に向かって言ったお母さんの言葉。その直後、階段を高速で下りていく音に、私たちは顔を会わせてクスクスと笑った。