アウト＊サイダー

　向かいに座るお父さんが訝しげに私を見ていた。その手にはジャムの瓶よりも大きな鮭フレークの瓶。お父さんはこの鮭フレークが大好きだ。

　冷蔵庫に彼(彼女?)がいないことはない。

「ハスミ？　今日電車で行くでしょ。カード忘れちゃわないでね」

　台所でだし巻き玉子を作っているお母さんが振り向かずに言った。

「んー」

　口にいっぱいご飯を詰め込んで私が返事すると、向かいから「もっとゆっくり食べないと」と難しい顔をした父。

　その後ろの時計を見て、まだ口の中に残るご飯をお味噌汁で流し込む。

　朝だけは普通に食べていたら時間が足りない。それを察しないお父さんの小言にも構っていられない。

「ご馳走さまでした」

　食器を流し台に持っていき、作っていたお弁当の中にだし巻き玉子を入れてもらって鞄の中にしまう。お母さんはお父さんの隣に座って、これから朝食のようだ。

「いってらっしゃい、ハスミ」

　リビングを出る私に両親が声を揃える。

　小さい頃は私を追いやる呪いの言葉みたいだったが、今はそうでもない。

「いってきまーす」

　怠そうに、嫌そうに聞こえるように、わざと間延びした声を出した。