アウト*サイダー
少しばかり強引だった手の主の正体を確かめるために上げた視線。そいつは悪びれる様子もなく、寝惚けきった目を余計に細めて「おはよ」と口角を上げた。
「なんでケイがいんの? てか、離れてよ」
ケイは「ん?」と首を傾げるだけで、背中に回した手を退けようとしない。彼の腕の中でもがいても、睨んでも、どこにそんな筋力があるのかびくともしない。
「いや、ハスミ、今倒れかけてただろ。駅着くまでケイに掴まっといた方が良いって」
ケイの肩越しから顔を出したリョウスケが呆れたように口を出す。
「あれ、リョウスケも今日は電車?」
リョウスケの言った通り、ケイにがっちりとホールドされてから電車が揺れてもあまり気にならなくなったから、諦めて大人しくしておくことにする。
ケイの後ろで吊革に掴まっているリョウスケは私と同じ自転車組だ。
何となくイメージ的に雨の中でも馬鹿みたいに自転車を漕いでるものかなと勝手に決めつけて私が首を傾げれば、しかめっ面を向けられた。
「……思ってること全部顔に出てるぞ。俺だって馬鹿みたいに雨に濡れてまで学校に行きたかないし」
「いいじゃん。俺はリョウスケと学校に行きたくない」
ケイは穏やかな微笑みを浮かべて私を見ながら毒を吐く。