アウト*サイダー
「今の関係を壊したくない。今のままが良い。友達でいたほうが楽だから」
ケイが私の手を離して、ゆっくり顔を上げる。
……なんて顔をするんだろう。
「ハスミの、そういう馬鹿正直なところも好きだよ」
無理矢理に感情が出るのを我慢して、それでも出てしまって仕方なくて、困ったように笑うケイは私に背中を向けると階段を上がっていく。
またも私の口は役立たず。だけど、そのまま諦めたくはなくて体が動いたものの、咄嗟に腕を掴んで引いてしまった為に、驚いて振り返った彼が段差を踏み外して、私の方へ倒れかかってきた。
「あっ!!」
「うわっ……ぁっぶな! ハスミ、大丈夫?」
あわや二人で落ちるかと思い、共倒れを覚悟したが、ケイが手摺に掴まってくれたおかげで助かったみたいだ。
ただ……その腕の間に私が挟まれた状態で、ケイとの距離がだいぶ近い。息を飲む音さえ聞こえてしまいそう。
恥ずかしいし、何を言うか考えてたこと全部忘れちゃったし、今何て言えば良いの?
ドクドクと脈打つ鼓動が暴れて、まともに彼の顔を見れない。そんな私の頬に触れたケイの手が熱い。それか、私の頬が熱かったのかもしれない。彼は少しだけ強引に前を向かせた。
「俺が大丈夫じゃない、これ」
静かだけど、ちょっと怒ったような低い声。ケイの表情もなんだか不機嫌で余計に戸惑う。
「どういうこと?」
「友達でいたいなら、そんな顔しないで」
「いや、そんな顔って言われても意味分かんないよ」
「それ……女の顔」