アウト*サイダー
「うん、当たったー。イターい」
ご機嫌な笑みを浮かべ、私へと落とされた教科書を拾い上げて立ち上がる。
お望み通りの、噂通りの、私を演じてやろうじゃないの!
「教科書、そんなに要らないなら……私が全部捨ててあげよっか?」
笑顔のまま、ちょっと声を低くして言って、持っていた教科書を軽く握り締めればグシャ、という音がした。
怯えたように顔を歪ませて何も言えなくなった、その子の周りにお友達がやってくると、差し出していた物をひったくるように取って、さも私が悪者かのような顔をして去っていく。
おい、待て。
わざわざ落とされた物を拾って渡したのに、ありがとうも言えんのか!?
本当なら、私だってバーンとアイツの足に教科書ぶん投げたかったわ!
文句をつけてやりたい気持ちが膨らんでいくけれど、教室中の視線がそれを妨げた。
……その中に一つだけ、違う視線を見つけてしまう。下がった眉、遠くからでも分かるほど強く握られた両手。目が合ったことで彼女がこっちに駆け寄ろうとしているのに気付く。
私はすぐに背を向けて、床に散らばった自分の教科書を拾い集めていく。誰の助けも私は必要としてないから。
しかし、さっさと拾って自分の机に戻ろうとしていた私の手とは別の手が急に現れ、驚いて顔を上げた。
「はい、これも」
「ケイ! 何でここに……」