アウト*サイダー

 ケイとリョウスケが言い合ってる声も気にならないくらい、花菖蒲に目を奪われる。しっとりと落ち着いた佇まい。雨に濡れる群生は、ここが学校だということを忘れてしまいそうだ。

「ハスミ、あっちに東屋があるから、そこで花を見ながら食べようか」

「まるで自分が見つけてきたみたいに……!?」

「リョウスケは黙って」

 一人ずつ、軒先から東屋の間にある敷石を走って渡る。中央の長方形のテーブルに、私とケイはお弁当、リョウスケは購買の惣菜パンを広げて食べる。

「リョウスケ、ありがとう。こんなに素敵な場所を見つけてくれて」

 私の向かいに座るリョウスケに、お礼としてお母さんお手製のだし巻き玉子を箸で取って差し出した。隣からのただならぬ視線を感じながら。

「あ、あぁ、うん……お礼とか、いいよ、全然! 友達に聞いただけだし、パンあるしさ!」

 リョウスケもケイを気にしているのか、へらへら笑ってコロッケパン(コッペパンにソースがかかったコロッケと千切りキャベツが挟んである)を口に頬張った。ケイを見ると、満足そうに微笑んでいた。

 なんか、違うと思う。

 私の不服そうな表情が自分に向けられていることに気付くリョウスケだが「ほら、食べなよ」と、笑うだけ。
< 175 / 466 >

この作品をシェア

pagetop