アウト*サイダー

 今度はケイを睨む。彼は私の視線の意味に気付かないのか、はたまた、フリをしているだけなのか、笑って「俺が食べてあげる」と口を開けるので、ひょいと箸を遠ざけた。

 そして、ケイのお弁当の中身を確認する。

 和食中心のおかずの中には、ちゃんと黄色があって、再び目を細くして睨んだ。

 彼お得意の可哀想な顔を向けてくるが、私も譲らない。そうして折れたのは……もちろん、ケイ。

「あ! あそこに黒い人影が!?」

 後ろを向いて叫び、指した先を向くようにケイに目配せする。

「……わー、どこー?」

 大根役者も甚だしい、一直線な台詞。突然始まった芝居にリョウスケは、何がなんだかといった顔で頭を捻らせていた。

「リョウスケ、ケイが見てない内に……どうぞ」

 こそっと、と言っても絶対にケイには聞こえているんだろうけど、だし巻き玉子をリョウスケに差し出す。

 困惑した表情の彼は、私とケイを見遣った後、覚悟を決めた顔で、パクリと食べてくれた。

「顔、真っ赤……」

「ほんっと、美味すぎるんだよぉ!」
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