アウト*サイダー

 誰も居ない、電気が付いていない暗い廊下でケイと二人きり。

 握られた手に力を込められて、彼が一歩私へ近付く。私が一歩後退ると、彼もその分の距離を詰めて私を壁際へと追いやった。

「ここに来たのは何で?」

 握った手と反対の手を私の体の横に当てて、さりげなく逃げ場をなくす。

「俺が告白されるって聞いて、どう思った?」

 すぐ頭上から聞こえるケイの低い声。

「ちょっとでも、心配してくれた?」

 ちょっとどころなんてもんじゃない。ケイが誰かと付き合うなんて嫌。考えたくもない。

「ハスミ……何か言ってよ」

 感情が拗れていく。ケイに対する気持ちも、彼が私に求める気持ちにも、答えは出ているのに。

 いざ口にしようとすると、嫌な記憶が蘇ってきて邪魔をする。瞬きをする度、脳裏に焼き付いたそれがフラッシュバックされるのだ。

 エアコンの切れた蒸し暑く狭い部屋。

 カーテンの隙間から覗く光。

 それを遮る黒い大きな影。

 硬い床に押し付けられた背中の痛みが、裏切られた痛みが、目の前の現実を引き剥がしていく。
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