アウト*サイダー
「ハスミ?」
無意識に息を止めていたようで、吐き出した息が僅かに震えた。
私がこのまま返事しないと、彼にまた変な誤解を生じさせてしまうだろう。階段ダッシュをしたせいで頭がトリップしたとか、適当な嘘をついてしまおうか……と考えて止める。
ただ私だけを捕らえるケイの目を見て、そんなことが出来るはずがない。でも、全てを話すことも無理がある。
臆病な私は、ケイの胸に頭を預けることで精一杯だった。
そんな私に彼が何を思ったのか知る由もない。だけど、ケイは何も言わずに、そっと私の頭と背中に手を回して抱き締めてくれた。
その優しさに、罪悪感を抱く。
「ごめん」
私が許される為だけの言葉。なのに……
「いいよ。ハスミがこうやって甘えるのが俺だけだってことに、今すごく優越感に浸ってるんだ」
くすくすと楽しそうに冗談を言って、私を笑わせようとする。
だから、笑おうとして……失敗した。笑ったつもりが、それは泣き声になって涙が溢れた。もう、誤魔化しようがなくて嫌になる。
「うっ……も、やだ……ごめん、ケイ」
涙や鼻水がついてしまう前に離れようとした頭を、彼は引き寄せて、さっきよりも体を密着させた。
「泣いてる理由が俺だと自惚れたいから、俺に慰めさせて」