アウト*サイダー

 こんなに辛い思いさせてごめんね。そう言って、以前みたいに、小さく縮こまるハルちゃんを抱き締めてあげたい。

 でも、そうすると河西さんたちとは一緒にいられなくなる。理不尽な噂話や、クラス中から向けられる嫌な視線がつきまとうことになる。

 私が勝手にしたことで、より彼女を苦しめる。

「ちょっと、田口さん。ほんと最低だよね。友達の好きな人に告白とかする、普通?」

 ハルちゃんの前にやって来た取り巻きによって、彼女が後ろに追いやられてしまった。まるで大切な友人を庇う良い人を繕って。

「ていうか、自分が男に注目されてないと気が済まないんでしょ。現に、いつも誰かと一緒だし」

 面と向かって言えないのか、こちらに顔を向けずに声だけ聞こえるようにして言う。

「あの噂、本当だったね」

 誰かが呟いた一言。

 私の全神経に緊張が走る。

 嫌な汗が流れて、呼吸が乱れる。

 言った奴を探る。そいつと目が合えば、怯えるように身を竦めて誰かの影に隠れようとしていた。

「ああ、噂って……田口さんが実はビッチだってこと?」

 クスクスと笑い声がして、それがだんだんと大きくなる。耳鳴りのように響いて、周りの音が聞こえなくなっていく。

 上も下も分からなくなって、平衡感覚が失われる。その怖さも感じられない。ただ、怒りで自分を制御できなくなった怖さだけ感じていた。
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