アウト*サイダー

 息も絶え絶えな私の目の端に残った涙を親指ですくって、ケイはそれを舐めた。そして私の腕を引き寄せようとしたが、それを何とか拒む。

「ハスミ?」

 何故拒否されたのか、心底理解出来ないという彼の顔を睨み付ける。

「無理矢理は……嫌!」

 深呼吸しようとしても、余計に息が苦しくなる。

「私、嫌がって……るのにっ」

 彼とキスするのが嫌な訳じゃない。ただ、ああやって、知らない人みたいに無理矢理するケイが怖い。それに流されてしまった自分にも嫌悪感を抱く。

「ごめん、ハスミ」

 彼の手を再び払いのける。言葉を出すのも辛くて、胸を押さえた。

 際限なく出てくる涙が恨めしい。一度感情が溢れると抑えられなくなる私は、どこか可笑しいのだと思う。治したくても、治せない苛立ちが、溢れた感情に加勢する。

 ケイが肩に触れた。それを払おうとした手を掴まれて、顔を向き合わす。

「怖い思いさせてごめん。本当に、ごめん」

 伏せた目と、力なく離れた手。ケイは悪くないのに。私が、こんなに落ち込ませてしまった。
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