アウト*サイダー
「ケイ、ごめん。鼻、見せて……」
後少しで顔が見れるという距離で彼の手が私の頬に触れて、反対側の頬で軽いリップ音を鳴らした。
頬に残るケイの唇の感触。熱くなるそれを隠すように手で覆った私に、彼の笑窪が現れた。
「誰の彼女が、可愛げがないって?」
……何で、あんなこと言っちゃったんだろう。
「ハスミー? あれ、どうしたの? 俺の彼女が喋れなくなったのか? 大変だ、これはキスしないと治らないみたいだな」
顔に手を伸ばしてくるケイをぺしぺし叩いて、ベンチから立ち上がる。
「よくも騙したわね。もう、絶対心配なんかしないから」
「俺の彼女は俺のことを心配してくれる良い彼女だなー」
教室に残した鞄を取りに戻ろうと茂みに足を入れる私の手を、ケイの大きな手が包み込む。
「その変な喋り方を早く止めないと、良い彼女になってあげない」
入り口をくぐり抜ける時、彼が先を歩いて引っ張ってくれて、出た後に私の頭に付いた葉っぱを取ってくれる。
「良い彼女じゃなくても、俺はハスミが良い」
私は返事をする代わりに、ケイの肩に付いていた葉っぱを取った。
「バレないのは良いけど、もう少し除草しないとね」
「そう? 俺に付いた葉っぱを優しい彼女に一枚一枚取ってもらうのも楽しみなんだけど」
「残らず刈り取ってしまわないと」
ケイからのブーイングを全く無視して、私は教室に急いだ。