アウト*サイダー
不貞腐れるように目線を落として、繋いでいた手に少しだけ力を込めるケイだったが、予鈴のチャイムが鳴ると僅かに溜め息を溢した。
次に出される言葉を彼に言われるよりも前に、私が口を開ける。
ごめん、という言葉は気持ちが後ろに下がるだけで、ちっとも前向きになれない。今みたいに、言いたいことを飲み込んで、その言葉で場を収めようとしている時は。
「分かった。気を付けるから……だから、ケイもそんな神経質になって女子と関わらないようにとか、嫌われようとしないで。少なくとも、私の為だとか、そういったことでは」
彼の言う通り(とは言っても、私がこれまで男に媚びたつもりなど毛頭なかったのだが)、近頃ケイと同じクラスの男子によく話しかけられるようになって、それまで話したこともなかった人でも、なるべく感じの良い受け答えを心掛けていた。
彼の友人なのだし、彼に良かれと思っていた私の振る舞いが、逆に良く思われていなかったとは。いや、きっと、付き合う前から、そういう風には思っていたんだろうな。
「ほんとに俺の気持ち、分かってくれた?」
疑る目を向けてくるが、ほんのちょっと上がった口角を隠しきれていない。
「機嫌が直ったんなら早く行って。また放課後ね」
男と話すな、関わるな、なんて身勝手な束縛を許容できる広い心は生憎持ち合わせてはいない。でも、ケイにばかり我慢させることもしたくない。