アウト*サイダー

 とにかく彼の言う、分別ある距離を保つことを意識するしかない。それは彼にだって言えることだ。私の為だという名目で、女子を冷たくあしらうのが分別ある行動だとは言えないだろう。

「うん。またね」

 少しはにかんで手を離したケイが教室を出ていく。

 それを見送った後で席を立ち上がった……私に突き刺さる二つの視線。

「宮永と付き合うハスミンがすごいと思ってたけどさ……」

「案外、ハスミンに合わせられる宮永が貴重な存在だったりするかもだよねぇ」 

 二人で頷き合って私を見る。何がどう、すごいのかよく分からない。まぁ、篠田さんが言ったことは一理あると自分でも思う。

「今日はありがとう。すごく助かった」

 お腹をさする仕草で把握した須賀さんが気にするなといった感じで首を横に振った。

「彼氏がしっかり賄賂を渡してくれたからね」

 あ、そういう意味のお菓子だったのか。

「うわぁ、悪い顔してるよ、スガっちゃん」

 篠田さんが口紅を塗り直しながら笑う。放課後は散々愚痴っていた彼氏とデートなのだろう。オレンジっぽい赤色で色付けられた唇。華やかな彼女をより一層明るくさせた。

「ハスミンも塗ってみる?」

 私の視線に気付いた篠田さんが口紅を差し出したが、畏れ多いと丁重に断った。そのタイミングで教師が現れて、早々に冷房で冷たくなっている自分の席へ戻った。
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