アウト*サイダー
リョウスケは自分の自転車の所まで戻り、スタンドを上げてそれに跨がった。
「いや、薄々は気付いてた。ハスミがケイのこと意識してるのも」
ハンドルの所に肘を置いて猫背になる彼の背中。顔だけ後ろに向けて私を見つめる。
「自分では気付いてないだろうけど、ケイに負けず劣らず、ハスミも分かりやすかったからな」
リョウスケにクスクス笑われるなんて、なんか癪に障る。不機嫌さを隠さないで自転車の籠に鞄を入れた私に、リョウスケはわざとらしく肩を竦めた。私は聞こえるように嘆息して、簡単にだが、事の顛末を伝えた。
河西さんの嫌がらせや堀江君への告白は、さすがに驚いたようだったけれど、私がケイに告白したことは「良かったな」と言ってくれた。その笑顔に安堵しながら、少しの不安を感じて、重い口を開く。
「あのさ……ケイとは付き合ったけど、リョウスケと一緒に居られなくなるのは嫌なの。だから、変に遠慮なんかして私を避けたりしたら許さないからね」
ケイとの関係が変わったことで、リョウスケとの関係まで変わるのが怖かった。
視線を地面に落として手を握り締める私に、彼は「はいはい、お姫さんの言いつけ通りに致しますよ」とふざけた感じの声で笑って言う。
リョウスケを見れば、そこにいつもと変わらない笑顔があった。彼の良いところは、私の不安に気付いてくれるところだ。笑えない時でも笑わせてくれる。