アウト*サイダー
裏門の手前にある木の傍らで立っていたケイが、私たちの姿を見つけるなり、眉間にしわを寄せた。
「遅い」
リョウスケが私の方へ親指を向けて「ハスミがどんくさいから自転車出せなかったんだよ」と、ケラケラ笑う。
ケイの所まで来て自転車を止める。私は軽くリョウスケの肩にグーパンチを入れた。それから、ケイも「何かムカつく」と言って同じところに同じようにした。
痛がるリョウスケに気が済んだのか、ケイは私の自転車の後ろに乗った。お腹に回された手に、意思とは正反対に顔が熱くなる。
「どーした、ハスミ? 乙女の顔になっちゃって」
ニヤニヤと気味悪く笑うリョウスケを睨むが、後ろから立ち上がったケイが顔を覗き込んできて、至近距離で目が合う。私は居たたまれない気分になって顔をそらした。
「ほんとだ。可愛い」
頬に伝わる柔らかな唇の感触。振り向けば、ケイの余裕の笑窪と、その向こうで何故か恥ずかしそうに顔を赤らめ、隙間だらけの手で目隠ししているリョウスケがいた。
私は怒る気力も恥ずかしがる可愛げもなく、しかめっ面で前に向き直った。
「お前らのイチャイチャも十分見せつけられたし、俺は面接行ってくるわ」
やれやれ、みたいな感じで言ったリョウスケに「せいぜい頑張って、バイト先で彼女をつくる妄想を現実に出来ると良いな」と皮肉を目一杯に浮かべた表情のケイが鼻で笑う。
「……動機が不純過ぎる」
私は最大限に軽蔑の眼差しを送った。