アウト*サイダー

「もう、お腹痛くない?」

 リョウスケがブーブー文句を言いながら面接に向かったのを見送った後、私の表情を確かめるように荷台から降りて前に回ってきたケイが背を屈めて聞く。

 心配性なんだから、と呆れながらも、嬉しさで顔が綻ぶ私は単純な女だ。

「それより、ケイもバイトでしょ? 早く行かなきゃ。近くまで乗せて行ってあげる」

 荷台をポンポンと叩いた私に、だけど彼は首を横に振った。

「すぐそこだから」

「あぁ、そう」

 自然と落ちる声のトーン。別に寂しくなんかないけど。どうせ、明日も会えるし。

「ハスミ、バイト頑張れるように一つだけお願い事があるんだけど、良い?」

 ケイが首を傾げて微笑む。一つだけなら、と頷いた私の耳元に顔を寄せて、

「俺にキスしてくれる?」

 言われた瞬間から身を引いて固まる私を予想していたように、ケイは楽しそうに笑う。

「な、何でそんなにキスしたいの」

 さっきもしたのに、と頬に手を当てて思い出したら、心臓がドクドクと暴れだす。

「自然な事だと思うけど? 好きな子と両想いになって、付き合って、触れたいって思ったり、キスしたくなるのは。ハスミは俺に抱き締められるのが好きなんでしょ? 俺はハスミの唇が特に好きなんだ」
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