アウト*サイダー
* 一回休み
廊下の窓の向こうに見える、絵の具みたいな青さをした空。下を見下ろすと、グラウンドの砂が太陽に反射しているのか、見ていると目が痛くなって前に向き直った。
あと少しすれば夏休み。
未だ続く上靴みっけ遊びや、放課後の掃除当番で私以外全員ストライキ、肥大化が止まらない噂。休み期間に入れば、それらと暫く離れることが出来る。
二時間目の後の休憩でトイレに行った帰り、用を足して機嫌良く歩いていると、前方に紙の束を持った背の低い子がよろよろ歩いていた。
分厚い紙束。それを見て、つい先日、数学担当の教師から渡された夏休みの課題を思い出す。
木村先生は気の良いおじさんだけど、ずぼらな所があってすぐに生徒をこき使う。その課題も、重いからという理由で私のクラスの男子に教室まで運ばせていた。
おそらく、あの子も木村先生に頼まれたのだろう。でも、女の子一人で運ぶのは無理がある。手伝いに行こうと足を速めた。その瞬間、彼女に誰かがぶつかって、体勢を崩した体は傾き、そのまま課題が床に散らばっていた。
あちゃー、遅かったか。
駆け足で彼女の元に近寄る。当然、ぶつかった人も拾うのを手伝うはずだと思っていたのに、誰も近付いてこないことを不審に思って周りに視線を配れば……
「またかよ」
「どんくさいよな、ほんと」
一部始終を見ていたはずなのに、誰もが彼女に冷たい目を向けて、ぶつかった男子さえ知らん顔して教室に入っていく。