アウト*サイダー
「ごめん、急に。びっくりしたよな」
彼を見上げれば、万人に好かれるであろう微笑みが向けられていて、私はどれが本当でどれが嘘なのか皆目わからないで口ごもる。
まるで滅多に会わない親戚の、貼り付けられた笑顔を見ているみたいだ。小さい頃はそれを向けられるたび、母親の足にしがみついて隠れた。
表面的な笑顔の、すぐ側に隠れた嫌なもの。可愛いねと目尻を下げて頭を撫でた、その裏で私を愛想のない子供だと眉をひそめた大人たち。
「ちょっと聞きたいことがあって」
今の彼の笑顔に、以前保健室で見た……私への嫌悪を抱いた、あの表情が重なる。
「田口さんって、伊織さんと仲良かったよね? どうして最近一緒にいないの?」
隠れる場所がほしい。
「それ、堀江君に関係ある?」
質問に質問で返す。普通なら苛立つだろう。私がされたら確実にキレている。けれど……
「関係、はないのかもしれないけど……この間のことが気になって。伊織さんが心配なんだ。辛そうな顔をしていたし」
堀江君は嫌な顔も、素振りもせず、悩ましげに話す。少しでも彼を疑った自分がとても卑屈に思えるほど。かと言って、信じる気にはなれないが。