アウト*サイダー
「それに、最近、伊織さんが河西たちに嫌がらせを受けているんじゃないかと思って」
自分の耳が可笑しくなったのか、聞き間違いか。
嫌な動悸にめまいがする。
「嫌がらせ?」
そんなはず、ない。でも……
「佐野っていう河西と同じサッカー部のマネージャーが教えてくれたんだけど……」
堀江君の表情が苦々しいものになって話し始めた。
佐野さんという子は河西さんと特別仲が良いわけではないが、同学年だから一緒に行動することも多いらしい。
部活が終わって帰る支度をしてる時、河西さんが携帯をいじっていたから何をしているのか聞けば、メッセージアプリで楽しい事をしているのだと言う。
それは……
「伊織さんへの誹謗中傷を複数人で送りつけているんだ。アドバイスという名目で」
佐野さんは実際にその内容を見て、さすがに見過ごすことが出来なかった。それで自分の耳に入ったのだと、堀江君が目線を落として言った。
私は頭を押さえて、大きくため息を吐く。
脳裏に浮かぶ、彼女の苦しそうな顔。どうやら、とんでもない検討違いをしていたようだ。
「……分かった。ありがとう、教えてくれて。でも、堀江君には悪いけど口挟まないでくれない?」