アウト＊サイダー

　私にはハルちゃんが迷いなく頼れるほどの、信じられるほどのものがなかった。だから、せめてハルちゃんの恐れる怒りの矛先が、理不尽な視線が私だけに向けられるようにした。

　堀江君の言う道理とか、そんな大それたことではない。

　私は何も知らなかっただけなのだ。

　こういう時、友達に何をして、何を言ってあげられるのか。

　だから、ハルちゃんの苦しそうな顔を、辛そうにしているのを見るたび、私は私の出来ることをしているのだと言い聞かせた。

　何も出来ない言い訳をし続けた。

　私がいなければ、ハルちゃんを助けられたかもしれないという堀江君が疎ましい。

　そして、ハルちゃんにとっての想い人である彼が彼女と両想いであるという事実に動揺しながらも、気付いてしまったことがある。

　堀江君がハルちゃんに告白して、二人が付き合い、彼に守ってもらうことが彼女にとって良いことなのでは、と。

　そこに私がいなくとも。

「俺は本気だよ」

　彼の顔に繕ったものは何一つなかった。

「田口さんの言う通り、女子の問題に俺が入るのは難しい。だから、協力者が必要なんだ」

　堀江君が羨ましい。

　自分のやるべきことを、きちんと見据えて行動している。

　あやふやな道しか渡れない私とは違う。

　立ち尽くす私達に、教師が声をかけてくる。いつもの嘘っぽい笑顔に戻った彼から目をそらして、私は廊下を駆けた。