アウト*サイダー

 殺風景で、誰もいない、静かな場所。

 色褪せて、元の色が分からないパラソル。

 上靴のまま、砂を踏む違和感。

 ベンチに座って、ポケットからスマホを出す。滴り落ちる汗を拭って画面を開くと、メッセージが届いていた。

『暇だ。退屈。ハスミ構って』

 私は呆れながら、『授業中でしょ』と真面目ぶって送る。すぐに返信が届く。

『リョウスケが居眠りしてて先生に怒られてる』

 思わず笑ってしまった。バカだなぁと思っていると、またケイから送られてきた。

『俺はあいつが怒られてるからバレないけど、ハスミは大丈夫?』

 可愛い熊が首を傾げて、クエスチョンマークを浮かべているスタンプも一緒に。

 何て送ればいいのだろう、と逡巡して悩んだ末に『さて問題です。私は今どこにいるでしょーか』と送った。

 きっと、正解できないだろうな。

 真面目な私が授業を受けずに秘密の場所に来ているなんて、誰も思わない。

 返事が来ないスマホを横に置く。ベンチの上で三角座りして、誰もいないのを良いことにスカートの裾を捲し上げる。暑いんだもの。

 だけど、あの冷房の風が私を集中攻撃してくるより暑い方がましだ。
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