アウト*サイダー
「俺の話、聞いてた?」
電車に乗り込んで空いていた席に座る。ケイも当然とばかりに隣に座って不満げな顔を向けてきた。
「あー、うんうん。聞いてたよ、すごく」
駅に着いてからほとんど上の空だった。
「……分かった。もう、いいよ」
少し適当すぎただろうか。
拗ねた顔を俯かせて、背もたれに体を預けたケイ。
触れている左肩があたたかい。
「良くないって顔に書いてるけど? 今言わなかったら、もう聞かないよ」
そう言えばちらっと私を見て、唇を引き結ぶ。
「…………の時……俺が、その……さ……」
「え?」
言いにくそうに口の中でもごもご喋るから、聞き返して耳を寄せた。すると……
「やっぱり、いい。大事なのはこれからだし、多分忘れられてるだろうし……今は、それでいい!」
背もたれから体を離して前屈みに座り直したことで、左肩の熱が冷めていく。
けれど、下を向いて前髪をいじるケイの綺麗な首筋がよく見えるようになって何だかドキドキしてきて、彼の耳が真っ赤なことに気付くと私の耳も熱くなって……て、空調が可笑しくなったのかな。