アウト*サイダー

「疑うのは不安だから」

 記憶の中に色んな人との思い出が増えるたび、疑う項目がつくられていく。

 それを一つずつチェックして、採点して、そうやって一つずつ不安が消えていく。

「正直、まだケイを信じるのは怖い」

 信じるって、言葉ほど簡単じゃない。

「それでも私がケイを信じるのは、ケイが特別だから」

 誰にもこんなこと話したことなかったし、話そうと思ったこともなかったから、気恥ずかしさが襲ってくる。

「……うん。ありがとう。俺を信じてくれて」

 彼も照れくさそうに言って、私の頬にキスをした。

「俺も、ハスミを信じる」

 自信ないけど、と口からボソッと溢れた言葉を私は聞き逃さなかった。

「男に二言は無し!」

「えー、でもさ、ハスミの方が不安要素ありまくりで俺が不利なんだよ」

 不安要素ってなんだ、不利ってなんだ。

「ハスミって人を疑うとか言いつつ、気を許すまでのスパンが短いと思う」

「そんなことないよ。気を許したと思わせて本当のところはまだ疑ってたりするんだから」

 ぶーたれる彼を怒りきれない私。頭を撫でてやれば、可愛い笑顔を見せる彼に癒される。

「あ、もう時間だ。……ハスミ、キスして。今度は口に」

 この甘え上手め。荷台から降りたケイは私の傍らに立ち、背中に腕を回しておねだりの顔を向ける。

「仕方ないなぁ」

 ケイの唇は熱い。離れても、すぐに私を追いかけてくる。あと、もうちょっと。もうちょっとだけ、このままがいいな。
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