アウト*サイダー

 声の主を探す。探しても、私と同じく口をつぐんでいる顔しかない。そうして、おもむろに彼女が顔を上げる。

 いつものマイエンジェルの微笑み。「ハルちゃ……」言いかけた言葉は最後まで出ることはなかった。

「だいたい、デブとかブスとか外見ばっかり気にしてるけど、それを言ってる顔の方が醜く過ぎて見ていられないってことに早く気付いたら?」

 呆然とする私の横で堀江君が我慢できずに一瞬吹き出した。何が可笑しかったのだろうか。この状況で笑えるか、普通?

 口を手で隠していても無駄だ。ハルちゃんはそんな堀江君に目を向ける。嫌な予感しかしない。

「堀江君も……何が私の味方だ、よ。いつもいつも背後から近付いて、私を心臓麻痺で殺したいの?」

 可愛い顔で何てことを言うんだ。堀江君もさすがにヤバいと感じ取ったのか、素直に謝った。彼女は重い溜め息をした後、再び河西さんに目をやった。

「何でもかんでも好き勝手言って、人を傷付けて、見下して、楽しんで。自分が優位に立とうと躍起になるだけ人より劣ってるのが目立つものだよ? 本当、可哀想な人。相手にするのも無駄なくらい」

 揺るぎなく、堂々とした口調。けれど、それとは裏腹に私と繋いだ手は冷たく、僅かに震えていた。
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