アウト*サイダー
* 不甲斐ない
パンケーキなんて食べなければ良かった。
映画の最中にお腹が鳴ることを怖れて二枚も食べた。
そうして良い感じに満たされたお腹と、良い感じの薄暗さが私の瞼に重りを乗せる。
それに、いまひとつ映画の内容が入ってこない。
ラブストーリーなのは分かった。
うつらうつらとする視界の先で、二人の男女が引っ付いては離れ、また引っ付いて……を延々と繰り返している。
あー。もう、無理。頭を支えるべき首が仕事を放棄しようとしてる。目も半分しか開かない。
自分の意思ではどうにも抗えない眠気に、とうとう私は屈していた。
ガクッと下がった頭。その衝撃で一瞬目が覚める。
私の体を支えるように隣からはケイの腕が伸ばされていて、周りに気遣ってか耳元で「大丈夫?」と囁かれた。
それだけで飛び上がる肩。
どっくん、どっくん、痛いくらいに打ち付ける鼓動。
デートの最中に、しかも自分が観たいと言った映画で眠りこけるなんて酷い有り様に情けなくなる。
それでも、どうにか何事もなかったみたい繕って椅子に座り直した。
未だに鎮まらない胸の音を気にしながら、ちらっとだけ視線を隣にやる。鎮まるどころか余計に落ち着かなくなった。