アウト*サイダー

 カナトだ。中学の時からイツキと仲が良くて、そして、私とイツキがまだ友達だった頃、トクラと付き合っていた。彼女にとって初めての彼氏だった。

 カナトは一瞬だけ私に目をやって、しかし、すぐにそらされた。その姿が過去と重なる。

『あんな奴、好きでも何でもない! 最低だよ、ほんと。ほんと……ごめん、ハスミ』

 滅多に泣かないトクラが私にしがみつき、泣いて謝ったのは一度だけ。

 二人が別れた原因。

 誰にも使われていない物置と化した教室で、イツキとカナトを含めた男女数人が私の服を剥ぎ、携帯のカメラを向けたことがあった。

 イツキに唆されたクラスメート達が面白がって私を床に押さえつける傍らでカナトは、抵抗し、暴れる私に同情する目を向け、そして背けたのだ。

 イツキも、カナトも変わってない。

 私も。

「相変わらずだんまりか」

 何も言い返せない。何も出来ない。

 でも、黙ってれば良い。相手にしなければ良い。反抗すればするほど、感情を出せば出すほど、彼の罠に嵌められる。

「コイツと付き合ってんの?」

 不意にイツキの視線がケイに向いた。

「止めて。もうあんたと関わりたくないの」

 弱々しく震える声。寒くもないのに体まで震える。そんな私をイツキは可笑しそうに笑った。

「へー! 俺と喋ってほしくないぐらい、お気に入りって訳?」

 目を細めて口角を吊り上げる、その歪んだ笑顔に身がすくむ。息苦しくて、呼吸が乱れる。

「酷くないか? 俺たち親友だろ。今の彼氏紹介してくれたって良いと思うけど。あ、もしかして、まだあの事言えてない感じ?」
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