アウト*サイダー
「……ケイ? 何してるの」
止まった車内から外に出ていく人の流れを無視して、彼は私の隣に座る。肩が引っ付くほど、距離を詰めて。
「家まで送っていく」
私の手を繋いで、指を絡める。調子の良い笑顔で「家に着くまでがデートだから」なんて言うから、思わず笑いが溢れていた。
「それは遠足でしょ?」
「さあ? 俺はハスミといられるなら何だって良い。ハスミが笑ってくれるなら、それだけで良い」
ゆっくりと動き出した電車。
窓からは夕日が沈んで、暗闇が降りる前の静かな青色に染まった景色が見えた。
じきに暗くなっていくだろう。いつ消えるかわからない色を、私は黙って見続けた。
夕日のような鮮やかさはないけれど綺麗な色。
次の駅に到着して、また人が降りていく。向かいの席にはほとんど人が座っていない。そのまま発車して、流れゆく景色を眺める二人の姿が窓ガラスに写りこんでいた。
その中の彼と視線が合わさって、顔を隣に向ける。彼も私に顔を向けた。
「聞かないの? ……イツキの事」
「聞きたい……けど、聞けないっていうのが本音。聞きたくない気持ちもあるし」
彼の言葉に唇を引き結ぶ。
聞きたくない……か。