アウト*サイダー

 駅前はコンビニやラーメン屋があって、まだ人通りはあるが、住宅街に入った途端、人気が一切なくなる。

 切れかかった外灯がチカチカと点滅する。

「ここら辺、夜になると危ないよね?」

 隣で心配そうに顔を曇らせるケイ。私は肩を竦めて首を振る。余計なことを口走れば、これから送迎をすると言いかねない。

「いや、危ないよ。夜に出歩く時は俺を呼んで。というか、夜じゃなくても一人だと危ないから、遠慮なんかせずに呼んで」

 何も言ってない私を置いて彼が一人で納得してしまう。 

「いやいやいや……バイト中だったら? さすがに無理じゃない。ましてやコンビニに行くだけとかで呼べる距離でもないし」

 ケイの最寄駅から私の最寄駅の間には二駅分の距離がある。しかも、駅から家まで早歩きしても十分はかかる。

「コンビニって……あそこに見えてるコンビニ?」

 彼が指を指した方向に私がいつも行くコンビニが見えた。

「うん。そこが一番近いから」

 頷いた私の顔をケイが黙って見つめてくる。その表情が何かを探ろうとしているもので、私は瞬きの回数が増える。

「何、急に。どうしたの?」

「……うん? まあ、とにかく、あんまり夜に出歩かないように。分かった?」

 一つ、大きな溜め息をして小さな子供に言い聞かすように微笑む彼に私は口を尖らせて「はいはーい」と生返事を返した。
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