アウト*サイダー

* メッセージ



 夢を見た……気がする。

 目を覚ました瞬間までは覚えていたのに、起き上がって夢のことを考えようとした瞬間には、もう思い出せなくなっていた。

 クーラーのない部屋で必死に首を振る扇風機を休ませて、洗面所に向かう。

 鏡にうつった私の顔を見て言葉を失った。

 目から頬にかけて泣いた跡がついていたのだ。

「どんな悪夢を見てたんだろう」

 我ながら可哀想に思いながら、冷たい水でばしゃばしゃ顔を洗った。

 先日のデートから一度もケイに会っていない。彼は、例外になくバイトで忙しくしている。

 このままだと彼の顔を忘れてしまいそうだ……という、本人には言わない鬱積した愚痴を、ついトクラに電話で話してしまったのは間違いだったかな。

 お久しぶり電話が、いつの間にか尋問地獄になっていた。

 だけど、考えてみれば中学生の時までは同じ学校で、その日あった事をすぐに話せていた。それが今はなかなかそうもいかない。全部事後報告になってしまったが、ケイと付き合うようになったことや、ハルちゃんと仲直り出来たことをトクラに話した。

『まぁ、とりあえず……良かったね』

 躊躇いながら言葉を選ぶ彼女の優しさにお礼の気持ちを込めて「そうだね」と言った。そして、言うか迷ったけど、イツキとカナトに会ったということも伝えておいた。すると……

『何もされてない? ったく、あんたって、いっつも肝心な事は後で言ってくるんだから!』

 控えめに言ってぶちギレられた。

 そんな怒ること? という私の空気を彼女は鋭く察して小言をぶつくさ言い始める。右から左に受け流していたのもバレて、いつものファミレスに呼びつけられてしまった。
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