アウト*サイダー
「ごめん、ケイ。私が言い出したのに」
食券を注文口に彼が渡す。いいよと言われたけど気がすまなくてお金を渡そうとしたら……
「彼氏気分を味わってるの。何たってランチデートだから」
調子のいい笑顔を近付けられて、私はお好きにどうぞと呆れた表情をする。……あくまで嫌がっている体で。
それから食堂のおばちゃんの見事な手さばきを二人して見入った。
そして出来上がったオムライスを持って適当な席を見つけ、ケイと向かい合って座る。薄く焼かれた卵の上を川のようにケチャップが横断したオムライスが二つ机に並ぶ。
食堂は長方形の大きな机が沢山あるが、そのどれも人で埋まっていて、私の二つ隣にはカップルが横並びに座って自分達だけの世界を作っていた。
私には無縁な世界に目を背け、スプーンに手をつける。
「ハスミ、俺たちもあんな風にあーんってする?」
ケイの言葉に止まる手。掬ったオムライスの卵がはらりと悲しく舞い落ちた。