アウト*サイダー
「まぁね。まず、水着が、ダメ。それから、変な、男が、いるかも、しれないから、危ない」
押しては引いてを繰り返す。結構固くて力が必要だから言葉が区切れる。一回、休憩しよう。汗が止まらない。
「色々言われたわ。最終的に、自分も連れていけって駄々こねられた。バイトだから無理なくせに」
全然空気の入ってない浮き輪をハルちゃんが横から取りあげて、ものすごい速さで空気を入れていく。
愕然とする私に数分後、見事に空気が入ったパンパンの浮き輪を渡してくれた。
「宮永君が駄々こねる所が目に浮かぶよ」
ハルちゃんも自分のを膨らませていく。
「よく説得できたね」
肩に浮き輪を掲げて、疲労を滲ませた顔をしてみせる。それだけで彼女は幾分か察したらしい。
「ケイの本性を垣間見た気がする」
これは大袈裟ではない。本当に、本気で、奴は私の手足を拘束してでも行かせまいとしていた。
数日前。ハルちゃんと遊ぶ計画を立てている時にプールの話があがり、一緒に水着を買いに行った。その時、ハルちゃんがほんの冗談で『宮永君が知ったら怒られないかな』と笑った。
私も『まさか、そんな』と笑っていた。その、まさかが現実になった。