アウト*サイダー

 浮き輪を持って更衣室から屋内プールにたどり着く。久しぶりのプール。学校での水泳は何よりも嫌だけれど、今は早く入りたくてウズウズする。

「もう人がいっぱい! どこから行く?」

 ハルちゃんの声も、いつもよりテンションが高めだ。

 広い館内には三つのエリアがある。スライダーが並んである所と、流れるプール、ジャグジープール。幾つか売店もあって、フランクフルトやジェラートなんかが売ってある。

「まずは流れるプールにしよう。それからスライダーね」

 二人で頷き合って、転けない程度に早歩きする。その横を小学生くらいの男の子たちが走っていく。私達の歩幅が大きくなった。

 私が小学校一年生の時、市営公園の中にあるプールへと行ったことがあった。父が運転する車の中、曲がりくねった山道に辟易して不機嫌オーラ全開の私に母はフリルがついた真っ赤な水着を着させてくれた。

 そこにも流れるプールがあって、長さとしては百メートルちょっとのプールだったけど、浮き輪に掴まりながら一日中流れるままに流されていた。

 今も、ハルちゃんと二人で水の流れに従っていく。ただ何もせず、ぼんやりと。

「ねぇ、ハルちゃん」

 隣に顔を向ける。

「うん?」

 ハルちゃんは気持ち良さそうに両腕をぶらぶらさせていた。
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