アウト*サイダー

 どんなに美味しいかが滲み出てる表情の彼が、不意に私を見て首を傾げた。それからくすくすと楽しげに笑うから、今度は私が首を傾げる。

「ハスミ、動かないでよ」

 そう言うとケイの手が私に近寄って、避ける前に彼の指が唇に触れた。

 その一瞬の感触に私の頭が活動をフリーズする。そんな私に構わずケイはその指に付いたケチャップを舐めとった。

「まったく子どもだな、ハスミは。でも、可愛い」

 余裕の笑窪を向けるケイに私の中の何かが切れた。側にあった紙ナプキンを引っ張りだし、恥ずかしさとか怒りとかを込めてそれを奴の口に押し付けていた。

「ちょっ……っ!? え……?」

「ケイのくせに……!」

「ひ、ひどっ……」

 困惑しているケイに満足して私は腰を落ち着け、何事もなかったように昼食を再開させる。

 彼も乱暴に拭かれた口を気にしながら食べ始めると、また美味しさに浸って顔の筋肉を緩ませていた。……余裕の笑窪は気に入らないけど、その顔は見ているだけで気持ちがほかほかする。

 ケイはこんな顔もするんだな。ちょっと可愛いかも。
< 38 / 466 >

この作品をシェア

pagetop