アウト*サイダー
* 御対面
朝から窓に射し込む眩しい光。扇風機の温い風。ベッドの上で上半身を起こした私は、額に張り付いた髪の毛を払いのけて腕を伸ばした。
「ハスミー? まだ起きてないのー?」
ぼんやりしていた私はお母さんの声に顔をしかめる。
「なにー?」
ベッドを不承不承に降りて、部屋を出た。
「もう! まだ用意してないの?」
ダイニングテーブルに朝食を用意していたお母さんが振り返る。私の眉間に深く皺が刻まれる。
「逆に聞くけど、何でお母さんが張り切ってるの?」
娘の私が言うのも変だけれど、お母さんは母親としても、女性としても憧れる人だ。お店に立つ姿は本当に生き生きとしていて、男性客に口説かれる(その度、お父さんが割って入って牽制していた)のを何度か見たことがある。
そんなお母さんが、朝から整えた化粧に髪型、何年前に着ていたのって感じのワンピースを着ている姿を見て、思わず怪訝な顔を向けてしまう。
「おはよ……って、なんだその格好」
後からやって来たお父さんも私と同じ表情を浮かべた。
「何って、娘の彼氏が来てくれるのだから、それ相応の格好をして迎えなきゃいけないじゃない?」
頬を染めた母は少女のように父の前で一回転すると「このワンピース、覚えてる? 一年目の結婚記念日に着たのよ。まだ着れるものねぇ」思い出話に父も照れながら「……似合ってるよ」とぼそぼそ言って、不自然に咳き込んだ。